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扉の高さのこと
-今のくらし方を考えてみる-
家づくりを始める前の皆さんにわかっておいてほしい、とても大事なことがあります。
“私を含め、皆さん個性豊かなくらし方をしています”
自分は普通でこだわりないから大丈夫とお思いの方は特に要注意です。
同棲や結婚生活、ルームシェア等、他人と同居を始める時に価値観の違いに驚きませんでしたか?
皆さん、年月をかけ、歩み寄り、試行錯誤して今の”普通”の生活を作り出したのではないでしょうか。
私たち、建築士はそこにリスペクトを持ってヒアリングや設計提案をしております。
ただ、それでも家が完成するまで気づけなかった、建主さんの”普通”に直面することが多々あります。
では、具体的に普通が共有できていないとどういうことが起こるのか、ご紹介していきます。
今回は建具についての”普通”です。
「扉が大きくなったから、ハンガーが掛けられないじゃないのー!」
リフォーム完成後、ご指摘を頂いてしまいました。
この建主さんは、高さ1.8mの扉を少し開けて上着を扉に掛けていたようで、
2.2mの扉では背が足りずハンガーが掛けられなくなってしまったそうです。
そういう使い方をしていたことは言われたり、見たりしないとわからないのですが、
奥様にとっては30年近くしてきた”普通”の事。
※もちろん、3Dを見せたりはしています。
※今はコート掛けを壁につけて解決しています。
便利になると思ってお金をかけてリフォームしたのに、不便になってしまったら悲しいですよね。
私も不便にしてしまったことが悲しいです。
これは、建築業界の”普通”と、昭和に建てた家に住み続けていた建主さんの”普通”の不一致です。
建築業界の扉の普通は昭和から平成で変わりました。
和室があるのは当たり前ではなく、ない方が多い時代になり、障子や襖ない家が増えましたよね。
そこから、障子等の高さ1.8mに合わせた扉でなく、洋室に合わせた2mが採用される様になりました。
現在、1.8mの扉が採用された新築の賃貸や建売はほぼありません。
※日本人の平均身長が増えた影響や材料の寸法の影響もあります
では現在の業界内で扉の一般的な高さはいくつでしょう。
→2mか2.2mです。
2.4mやそれ以上もありますが、高さの低い1.8mが採用される機会は減ってきました。
つまり、指定しなければ当たり前に2m以上が設置されてしまうということです。
ですが、今回の住宅のリフォーム前は1.8mの扉が設置されていました。
そして、それ以前に建てられた幼少期を過ごしたご実家ももちろん1.8mの扉だったのでしょう、、、
ということは、新しい家も1.8mの扉があるのが奥様の”普通”なのです。
では、
こういう悲しい結果にならないようにするためにはどうすれば良いのでしょうか。
もちろん最新のものを勉強して普通をわかるようになることも大事なのですが、
私のお勧めは、今住んでいるありのままの家を私たち建築士に見せること。
私も今普通に暮らしていることを全て他人に話すことは難しいです。
「百聞は一見にしかず」
言葉にできなくてもそのくらし方を見れば伝わることもあります。
ぜひお試しください。